『一倉定の経営心得』を読む その34 CSRとマーケティング

1. 「顧客訪問の目的は、売り込みではない。顧客の確保である」とは

 CSR(企業の社会的責任)は、顧客の確保活動と訳せばいいのだと気づかせられた。この言葉の背景は、B to Bの形態の営業活動の全容を描いている。
 営業マン一人一人にとっては商品の販売がミッションであり、その量により成績査定も決まってくる。しかし、会社にとっては販売量自体も大切ではあるが、「顧客」が必要なのである。

2. 顧客への販売と顧客の確保の違い

 顧客に販売することと、顧客の確保とは何が違うかということを理解することが大切といえる。販売時に顧客との間の接着剤となるのは、「商品」である。顧客を確保するときは信頼?ではない。信頼は結果の状態である。大切でないといっているのではない。
 信頼関係は「顧客の困りごとの解決の経緯で生まれる」プロセスが大事なのである。札びらを切るような解決の仕方もたまには必要かもしれないが、誠心誠意動くことや自己犠牲の概念が根付いているかどうかが試されている。それによって信頼が生まれて結果的に「確保」につながる。犯人の確保と同じである。これが入り口といえよう。

3. 信頼関係と継続接触

 信頼関係は継続なのである。継続のために必要なものは、心がけと、継続接触である。
 この全容をもって、顧客の確保といえる。顧客の確保は関係性を育てるプロセスが必要なのである、行きつくための第一歩は「御用聞き」である。
 回数や頻度、タイミングが大切である。最初は欲しいものを欲しい分だけ欲しいときに差し出す関係である。やがて、顧客自体も自分の欲しいものすらわからない状況が来る。顧客が欲しいものすらわからない状況、これはなぜ起きるのか。この状況こそ真に顧客が困っている状況といえる。

4. 結語

 この台座になるための固い材料が必要である。しかし、その強度を担保できる材料が何なのかわからない。欲しいものが何でるかわからない。この状況を「困った状況」とする。これを解決することが、真の信頼関係が生まれるプロセスといえる。
 次第に関係性が深まる中で顧客の困ったというレベルが上がっていく。最初は「必要な部品がない」から始まり、続いて「どんな部品が必要なのかわからない」へ、そして次に「どう作ったらいいのか分からない」へと。その結果、モノ作りだけでなく、次の方針で迷い始めることもままある。顧客のその想いに寄り添い続ければ顧客が逃げることはない。つまり売り込むことではなく、考え続けることが重要といえる。売り込んでも顧客の悩みは分からない。訊いて考える、訊いて考える。この繰り返しによって相手の悩みが次第に分かるようになってくる。 了

『一倉定の経営心得』を読む その34 CSRとマーケティング
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